最初にランウェイに足を踏み入れた男は、グリーンのクルーネックのセーターにベージュのコート、くすんだライトブルーのレザーパンツ(裾の仕上げはダブル)の出で立ち。アイテム1点1点はラグジュアリー以外の何物でもないが、全てが中間色でどこか控えめな印象を受ける。続くのは、ベージュのシャツと白のハイネックの下着の重ね着に軍放出品風のミリタリージャケットをはおり、くすんだパープルのパンツを穿いた男。どこか1960年代のイギリスのユースカルチャーを連想させるスタイルで、これまでのグッチ コピーのイメージとは少し趣が異なる。遠目ではフリースに見えるムートンのプルオーバー、カセンティーノ(毛玉加工)のベージュのチェスターコート、毛皮のダブルのポロコートは“ザグッチ”的な豪奢なアイテムだけれど、何かがいつもと違う気がする。

後半はグッチの得意とする黒のコレクションを並べたが、Pコートのボタンが大きかったり、サイドが編み上げになったライダースジャケットは丸襟になっていて、どこか可愛らしい要素も入っている。ショー全体を俯瞰すると、いつものほとばしるような男らしさというよりも、何となくナードな雰囲気。アイテム単体はラグジュアリーなのに、スタイリングでは “色気”を意図的に封印しているように見える。

このgucci コピーのコレクションを見て、1週間前のピッティウォモのトレンドの急転を思い出した。ここ数シーズン、クラシコイタリアの世界ではカラーが流行し、色気の大盤振る舞いみたいな状況が続いていたが、今シーズンはシック＆ベーシックへの回帰が鮮明になった。モードというリングにおける色気の世界チャンピオンのフェイントは、色気をあからさまに出す時代の終焉と内包する時代の到来を示唆しているのかもしれない。

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